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YUKON
出航
8月24日
朝、カヌーピープルのジャック・ザ・バーガー(仮名)が迎えに来た。ハンバーガー一日10個は食べてますという体型から、我々の間ではこのあだ名で親しまれていた。
ジャックは我々の荷物の余りの多さに絵に描いたような驚きを示したので、とりあえずKPまで荷物を運び、もし積みきれなければ一艇を二人艇にすることにした。KPではよく分からないなりになんとか積める目途がついたように思ったので、いよいよ出発である。
向かった先はテスリンレイク下のジョンソンズクロッシング、テスリン〜ユーコンをやる人にとっては定番のスタート地点だ。時刻は昼下がり、ゆっくりと支度を整える。各人元々やってることが違うので(猪は自転車、佐渡ヶ島はダイビング、そして俺は藪こぎ)、個装は人によって全く量が違う。例えば猪はシュラフを二つに巨大エアマットと言った贅沢品を積み、俺はばかでかい椅子にギターを持っているくせに脚回りは一人だけ長靴無しで渓流足袋、と言った具合。食糧、テント(なんと45人用と23人用の二張りもあるのだ)などを猪と佐渡ヶ島に押しつけ、俺は重くなるのを覚悟で酒を抱え込む。それでも全員喫水は5cmほどで操縦席(と言うのか?)の前後には堆い荷物が積まれ、風が吹けばカヤックのくせにカヌー並に影響を受ける船になった。
そんな膨大な荷物のせいで結局出発は4時半ころ。銘々勝手に漕ぎ出す。さっそく俺は操縦席の後ろから缶ビールを取り出す。日本の藪こぎでは絶対見られない景色に包まれての一杯は最高だ。この旅の間の酒は生まれて以来一番の美味さだった。
川幅はとても広い。100mはあるだろうか。J.C.で我々と一緒に用意していたドイツ人らしき4人組(カヌー2艇)が颯爽と横を漕ぎ抜けていく。我々はほとんど漕がず緩やかな流れに乗るともなしに漂っているだけなので、その速さはまるで無敵艦隊か倭寇を思わせるものであった。とりあえず出発にこぎ着けたことを祝う。
漕ぎ出して1時間半、距離にして5km弱、右岸に川原があり、川地図にもGOOD CAMPとあるので上陸してみる。ちなみに1時間半で5kmというのは川の流れの遅いこの部分であることを差し引いても非常にのんびりしたペースらしい。
川原は狭くも広くもなく、幅10m長さ100m程ある。土の部分は草地になっていてテントを張るにも良さそうだ。今晩の宿をここに決める。
テントや炊事場の場所を考えていると(熊対策として風向きを考えてテントに食事の匂いが来ないように50mほど離すべきだと教えられていた)、森に続く泥濘部分で熊の足跡が多数発見された。泥の柔らかさなどを考えるとそれほど古いものではない。初めての夜ということもあり、一同少し不安に思うが、それはそれ多勢の強み、赤信号みんなで渡れば怖くないというとおり、大声を出して乗り切ることにした。(けしてすでに漕ぎ疲れていたというわけではない。)
さっそく焚き火を起こして釣り糸を投げる。料理はすべてコック長佐渡ヶ島に任す。なんといっても彼は「私のアルバイト遍歴」というレポートにレストランで長くアルバイトをしたので料理の腕前が大変上達した、と書くくらいの自信家、さらにはホワイトホースの町で他の二人が見向きもしなかった丸のまんまのニンニクをかごに入れたほどの凝り性なのだ。彼のおかげで俺はこの旅の間中焚き火さえ起こせば料理はしなくても良いという特権的立場に立つことが出来た。
結局魚は釣れなかったので適当に飯を食って寝た。
8月25日
記録部屋に戻っちゃうの